関西電力役員らの金品受領問題で、福井県高浜町の元助役森山栄治氏(故人)と関係の深い地元の建設会社「吉田開発」に対し、金沢国税局が昨年一月に税務調査を始めた翌月、関電側は、森山氏から受け取った金品のうち約一億六千万円相当をまとめて返還していたことが分かった。
税務調査が関電役員らに及べば問題を指摘される恐れがあり、なるべく早期に返還しようとした可能性がある。
関電や関係者によると、金沢国税局は昨年一月、吉田開発に対し、裁判所の令状に基づく強制調査(査察)に着手。架空外注費を計上することで裏金を捻出し、原発関連工事の受注に絡んで世話になっていた森山氏に約三億円を提供していたことを把握した。
さらに数カ月後、森山氏の自宅を調べると、多数の金品が見つかり、それぞれに関電役員らの氏名と「確かに返しました」との趣旨を記した文書が添えられていた。総額は一億五千九百八万円に上り、豊松秀己副社長(当時)が昨年二月、自身や八木誠会長ら計六人分を一括して返還したものだった。
金沢国税局が確認できた六人の受領額は、未返還分を含め計約一億八千万円だった。関電に事情を聴くと「預かったものだ」と説明。ただ受領からの期間が相当経過したものもあり、豊松氏ら四人は、雑所得として居住地の税務署に修正申告した。
関電は昨年七月、社内に調査委員会を設置。二〇一一~一八年に森山氏と接点を持つ立場にいた役員や社員らを対象に調べた結果、六人を含む二十人が金品を受領し、総額は三億一千八百四十五万円に上ることが新たに分かった。
八木会長は二日の記者会見で、税務調査開始後のタイミングでまとめて返還したことについて「相手が受け取ってもらえる環境になった」と説明した。【東京新聞】