関西電力の役員ら20人が福井県高浜町元助役の森山栄治氏(故人)から約3・2億円を受け取っていた裏金問題で、関電側が2018年以降に受領総額のほぼ半額に当たる約1・6億円を森山氏に返却していたことが分かった。それ以前に約1・2億円が返されていたとはいえ、大半が18年以降なのである。
約4時間に及んだ2日の会見で、関電の八木誠会長や岩根茂樹社長は、金品を返却しなかった理由について、「(森山氏から)無礼者! ワシを軽く見るなよと言われた」などと説明。ともに怖くて返却できなかった、みたいな言い訳をしていたが、返却が判明した18年以降といえば、金沢国税局が森山氏に約3億円を提供した建設会社「吉田開発」に税務調査に入った時期と重なる。要するに税務調査で裏金がバレたために慌てて返したのが実態だろう。
関電幹部は昨年、森山氏にコッソリとカネを返し、会社は内部調査をしながら公表しなかった。黙っていれば表沙汰にならないとタカをくくっていたわけだ。それが八木会長、岩根社長のシドロモドロ会見の一因でもあるのだが、関電幹部が今、おびえているのは、カネの流れを克明に記した「森山メモ」が暴露されることだという。
2 / 3ページ
「裏金問題の発覚は、報道機関が金沢国税局の税務調査をスッパ抜いたから。ふつう、当局は税務調査の詳細をメディアに明かさない。ところが今回は、いつ、どこに調査に入ったのかや、森山氏の自宅から金品を渡した相手の名前や金額が書かれたメモが見つかったことも報じられている。これは内部告発をうかがわせるため、関電幹部は『森山メモ』も、いつか公表されるのではないかとビクビクしている」(司法記者)
■大金星の金沢国税局で不可解人事!?
今回の件は、関電はもちろん、原発推進を掲げる安倍政権にとっても大打撃だろう。まさに金沢国税局は拍手喝采の「大金星」だが、その裏で指摘されているのが「不可解な人事」だという。
「金沢国税局が『吉田開発』の税務調査に入った時期とほぼ同じころ、当時の局長が辞職を申し出て、国税庁長官官房付を経て昨年3月に退職している。税務調査は、入る前に数カ月かけて内偵し、ある程度の感触をつかむのが流れ。つまり、当時の局長は全容を把握していたでしょう。上がり(退職)が迫っていたとはいえ、北陸3県を管轄する金沢のトップが、税務署が最も忙しいといわれる確定申告の時期に辞職の申し出とはタイミングとして不可解です」(前出の司法記者)
3 / 3ページ
当時の国税庁長官は、森友問題で世論批判が殺到した佐川宣寿氏。昨年3月といえば国会で証人喚問されていた頃だ。なるほど、安倍政権にとって森友問題に加え、関電の裏金で政治家の名前が明かされるような事態は避けたかったに違いない。そんな“火ダネ”を掴んだ金沢国税局を快く思わなかったとしても、今の政権の体質なら不思議じゃない。
果たして「森山メモ」は出てくるのか。闇はまだまだ深い。
【日刊ゲンダイ】