関西電力の幹部が福井県高浜町の元助役だけでなく、元助役と関わりのある建設会社からも金品を受領していたことが分かった。関電は原発立地地域への支援策として地元業者に優先的に工事発注する方針を取ってきたが、不透明な金品の授受によって公正さに疑いの目を向けられる事態となっている。
関電の説明などによると、原子力事業本部の副事業本部長だった大塚茂樹・常務執行役員は、高浜町の建設会社「吉田開発」から現金100万円と商品券40万円を受け取っていた。同町元助役の森山栄治氏(3月に90歳で死去)は吉田開発の「顧問」だったとされる。
このほか、豊松秀己元副社長と鈴木聡常務執行役員も別の工事会社から250万円相当のスーツ仕立券を受け取っていたという。
関電は2004年に美浜原発(福井県美浜町)3号機で11人が死傷した蒸気漏れ事故を機に、地元対応を重視する目的で05年に原子力事業本部を大阪市から美浜町に移転。地域産業の活性化を支援するとして「県内取引先への工事発注と物品購入の拡大」を掲げた。
この一環として、原発関連工事の概算額などの情報を森山氏に提供していたという。
吉田開発は近年、関電関連事業の受注を増やしており、18年度の受注額は13億1千万円と14年度(7億円)から倍増した。17年末まで3年余りの間に受注した121件のうち18件は入札を行わない「特命発注」で、関電は「地元企業を優遇するためだった」と説明している。
幹部らが森山氏から受け取った金品について、岩根茂樹社長は2日の記者会見で「工事とは関係がなく、発注プロセスや金額は適正だったと考えている」と述べた。
これに対し、明治大の出見世信之教授(企業倫理)は「リベートの授受と疑われる行為であり、公益性が高い企業としてあってはならない。特別扱いで工事が高値発注されるようなことがあれば、コストは電気料金に反映され、消費者への裏切りになる」と指摘する。【日本経済新聞】