福島第一原発の放射性物質を含む処理水を巡り、大阪湾での受け入れもあり得ると松井市長と吉村知事が発言したことに対し、関西の知事らから「結論を出すのは早すぎる」などと異論が相次ぎました。
9月21日、大阪市で開かれた関西広域連合の会合。話題になったのが福島第一原発で増え続けている放射性物質トリチウムを含む処理水の処分についてです。
「非常にデリケートな問題ですし、しっかりと分析されないといけませんし。」(兵庫県 井戸敏三知事)
9月17日、大阪市の松井市長は「国全体で処理すべきだ」とした上で、環境への影響が無いという科学的根拠を示せば大阪湾への放出もあり得るとの考えを示しました。
「科学的には自然界にも人体にも影響しないと、世界の基準で環境基準をクリアしているものなんです。だからどこに流しても影響しない。」(大阪市 松井一郎市長)
しかし一方で、去年9月に東京電力は、処理済みの汚染水の約8割で、放射性物質の濃度が環境に放出する際の基準を超えていることを明らかにしています。今年6月末の時点でも、ストロンチウムやルテニウム、ヨウ素などの放射性物質について見てみると…全体の77%が基準値を超えています。最も数値が高いものは、基準値の約2万倍にも上るということです。
【貯蔵タンク約100万トンの放射性物質の濃度】(東京電力より)
基準値以下 =23%
基準値の1倍~5倍 =34%
基準値の5倍~10倍 =21%
基準値の10倍~100倍 =16%
基準値の100倍~1万9909倍=6%
東電は環境へ放出する場合、もう一度、放射性物質を取り除く設備で処理して濃度を基準値以下に下げるとしていますが、追加の費用に加え、年単位の時間がかかるとみられています。
「大阪と兵庫の大阪湾岸のシラスの漁獲量を合わせたら日本一の漁獲量。そういうふうな漁場に対して(処理水を)出すということは考えられない。」(大阪府漁業協同組合連合会 北村英一郎理事)
松井市長の発言を受け、大阪の漁協が府と市に抗議文を出すなど波紋が広がっています。こうした動きに対し大阪湾近隣の自治体のトップらは…。
「環境基準を下回っているから、しかも大阪湾で、汚染水を放棄してもいいんだという結論を出すのは早すぎるのではないか。」(兵庫県 井戸敏三知事)
「風評被害で言うと、今、韓国が逆にこれを虎視眈々と見ている。我々地方公共団体だけではなく世界的な問題になってくる。」(徳島県 飯泉嘉門知事)
「海に放出そのものを今イエスかノーかで問題にしてるでしょ。あれたぶん間違いだと思うんですよ。どのくらいのレベルでどんなふうにして放出するのかということの方が大事で。それをどうやって担保するか、どうモニターするかということが、たぶん一番問われているのだろうと思いますよ。」(和歌山県 仁坂吉伸知事)
3年後には設置スペースが無くなるとの試算もあり、議論を急ぐ必要があります。【毎日放送】