中部電力が、東京電力ホールディングスや日立製作所、東芝と原子力発電所の保守管理を担う共同出資会社の設立に向け、月内にも基本合意を交わす方向で最終調整に入った。四社は互いの経営状況などを適正に評価する「デューデリジェンス(資産査定)」という手続きを進め、新会社設立に向けた協議を本格化させる。
関係者によると、四社の原発保守管理に携わる部門を新会社に集約し、ノウハウを共有することで作業の効率化やコスト削減を目指す。重複する部門の人員は削減することも検討する。四社は昨夏から連携に向け、協議してきた。
東電福島第一原発事故で規制基準が強化され、対策工事費が膨らむ中、各社の原発事業は苦境に陥っている。四社は福島第一と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)と呼ばれる原発の建設や運転を手掛けてきた。関西電力などが所有する加圧水型軽水炉(PWR)は事故後、計九基が再稼働する一方、中電、東電が保有するBWR計十基(廃炉が決まった原子炉は除く)は停止したままで、再稼働のめどは立っていない。
中電は原子力部門に約千人の社員を抱え、浜岡原発(静岡県御前崎市)に年間一千億円の維持管理費を投じている。東電も再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)や廃炉が決まった福島第一、第二原発など原子力部門で約三千人が働く。稼働する原発に携わった経験のない社員が増える中、新会社に人材を集約することで技術レベルの維持や継承につなげる狙いもある。
一方、日立は一月に英国での原発新設計画の凍結を決め、東芝も海外案件から撤退。原発の新設や増設が見込めない中、メーカー側にとっては保守管理を一体化することで一定の業務量を確保できる利点がある。
東電は、建設を中断している東通原発(青森県)を新会社に移管して共同事業化することも視野に入れている。【中日新聞】