原子力規制委員会は3日、火山の噴火が原子力発電所に与える影響を評価するための指針を見直す検討に入った。原発の運転差し止めなどを巡る複数の訴訟で、この指針の分かりにくさが指摘されていた。巨大噴火のリスクや噴火の予測などに関する指針の表現を改め、規制委の考えを明確にする見通しだ。
見直すのは規制委が原発の火山対策を電力会社に求める際の指針「火山影響評価ガイド」。規制委の更田豊志委員長は3日の定例会合で「読みにくさが指摘されており、記述の明快さについて改善の余地がある」と述べ、原子力規制庁に見直しの検討を指示した。
同ガイドは過去の訴訟で、噴火をある程度予測できることを前提としている点などが「不合理」と指摘された。6月17日に原告敗訴の判決が出た九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の設置許可取り消しを求めた行政訴訟でも、福岡地裁が指針について「不合理でないと立証されたかどうか疑いが残る」と指摘した。
更田委員長は同日の記者会見で「誰が読んでも同じ解釈になる文書が望ましい」と見直しの方向性を示した。規制委は指針を補足する「基本的な考え方」を18年3月に公表し、巨大噴火の定義を明確にして「リスクは社会通念上許容される水準」などと説明を加えたが、ガイド自体は変えていなかった。【日本経済新聞】