日本原子力発電東海第2原子力発電所の事故に備え、立地する茨城県東海村が24日、広域避難訓練を実施した。平日開催の今回は初めて小学生や要支援者らも参加し、スムーズに避難ができるかなどを検証した。同原発の周辺自治体では避難に関する住民アンケートなども進めている。避難計画の策定やその先に控える再稼働の是非判断に向けた準備が徐々に広がってきた。
3回目となった東海村の住民参加型訓練では、原子炉の冷却機能の一部に異常が発生したケースを想定。雨が断続的に降るなか、同村から南西に約80キロメートル離れた避難先の一つ、同県つくばみらい市へと避難した。
同原発から約2キロメートルの距離にある介護施設、グループホームメジロ苑からは6人の高齢の要支援者と3人の職員が2台の車に分乗し、つくばみらい市の公民館に1時間半かけて移動した。清水浩ホーム長は「実際に事故が起こると渋滞が発生し、入居者の体力を消耗させる。職員の家族や入居者の家族への連絡など不安な部分も多い」と話していた。
東海村の2つの小学校からは児童83人がバス4台でつくばみらい市へ移動。保護者23人への引き渡しがうまくできるかも確認した。訓練には住民265人に加え自衛隊や警察など関係機関も含め約500人が参加した。
訓練後、東海村の山田修村長は「全体としてはスムーズに避難できた」と講評した。つくばみらい市の小田川浩市長は「足元が緩いなか、非常にためになったのではないか」と振り返った。
万一の事故に備えた動きは周辺自治体でも広がっている。日立市はこのほど、住民の避難行動に関するアンケート調査の結果を公表した。回答した1345世帯のうち、自力での避難手段確保が困難と答えた世帯は23%を占めた。このうち、バスで避難できるとしたのは233世帯だった。この結果、市の試算では50人乗りのバス約600台が必要という。
県の試算では同原発から5キロメートル圏内の避難に407台、5~30キロメートル圏内に2800台が必要という。ただ、これは東海村が以前実施した住民アンケートを基にしたもので、各自治体における実際のニーズにそぐわない可能性もある。ひたちなか市も今月末まで住民アンケートを実施しており、県はこうした調査が出そろった段階で避難計画にどう反映していくかを検討していく。
原電が2月に同原発の再稼働を目指す意向を表明してから約4カ月。半径30キロメートル圏内の14市町村に義務づける広域避難計画の策定を終えたのは3市にとどまる。実効性のある計画作りには、住民ニーズの把握や訓練の積み重ねで課題を洗い出すことが欠かせない。【日本経済新聞】