韓国原子力安全委員会は22日までに、韓国水力原子力が運営する原子力発電所ハンビッ1号機(全羅南道霊光=ヨングァン)の使用停止を命令した。同機は10日の性能確認試験中に出力が規定値を超えて急上昇しており、法律では直ちに運転を停止する必要があったが、実際に停止したのは11時間半後だったことなどを問題視した。
同機は定期点検を終え再稼働の準備中だった。同委によると、同機は10日午前10時30分ごろ、核分裂反応を抑える制御棒の制御能力を測る試験で、熱出力が運営指針で定めた制限値の5%を超え18%まで急上昇した。
放射性物質の漏洩はなかったが、同委は制限値を超えたのに韓水原が直ちに運転を停止せず、制御棒を操作していたのも無免許者だったと指摘した。同委は原子力安全法に違反した可能性があるとして同機の使用停止を命じ、特別司法警察官が調査に乗り出した。
韓水原は「出力が18%まで上昇した後、午前10時32分に制御棒を挿入した。10時33分には1%以下に下がり、11時2分以降は0%水準を維持した」と説明した。ただ運転は続いており、手動で運転を停止したのは午後10時2分ごろだったという。「出力が25%になれば原子炉は自動停止する設計になっている」と安全には問題がなかったと釈明した。
ただ無免許操業については「免許所持者が指示・監督していれば免許がない人でも作業できるが、当時免許所持者が指示・監督していたかは調査中」と明言を避けた。
専門家は今回の事態が直ちに大事故につながる恐れがあったとはみていないが、マニュアルが守られていない韓水原の管理体制を問題視している。
韓国は2017年に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権が原発への依存度を減らし、液化天然ガス(LNG)や再生可能エネルギーによる発電を柱にする「脱原発」政策を推進している。韓国では原発が発電量の3割を占める主力電源で「エネルギー政策の大転換」(文氏)には産業界や保守派が反発している。【日本経済新聞】