東京電力福島第一原発の事故前の津波対策について検証した報告書を日本学術会議がまとめ、21日公表した。東電が高い津波に襲われる可能性を把握しながら対策をとらなかったことから、原発をもつ電力会社は研究段階の知見や情報でも何らかの対応をとるべきだと指摘している。
報告書などによると、東電は事故前の2008年に原発の敷地を超える高さの津波を試算したが、知見が不十分として土木学会に妥当性の検討を依頼し、すぐに対策をとらなかった。学術会議は、新たな知見で原発が深刻な影響を受ける可能性があるとわかった場合、電力会社は真摯(しんし)に受け止めて対策の厚みを増すことが重要と指摘した。
事故当時、原子力に関わる組織全体に「安全に対する慢心と想像力の欠如」が広がっており、頻度の小さな事象によって起きる事故に関する研究や投資の意欲が減退していたと分析。原子力安全に関わる学術団体なども「自然現象の脅威や事故に対する想像力が欠如していた」とした。【朝日新聞】