東京電力は11日、来週にも福島第一原発3号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める、と発表した。使用済み燃料の取り出しは4号機で完了しているが、メルトダウンを起こした1~3号機では初めて。現場は放射線量が高く、未経験の遠隔操作による作業は難航が予想される。
損傷した3号機の原子炉建屋上部にあるプールには、今も566体の核燃料が残る。再び大きな地震や津波に襲われると建屋や設備が壊れる恐れがあり、東電は燃料搬出を急いでいる。
計画では、約2年間かけてすべてを取り出し、構内にある別の共用プールに運ぶ。建屋から約500メートル離れた操作室で、作業員がモニターを見ながら装置を動かし、燃料を1体ずつ持ち上げて水中で7体入る容器に入れた上で、クレーンで約30メートル下の地上に運ぶ。建屋の屋根は爆発で吹き飛んだが、燃料の取り出し作業中に放射性物質が飛散するのを防ぐため、かまぼこ形の鋼製カバーで覆った。
メルトダウンが避けられた4号機は、2014年末までに1535体の燃料を搬出した。線量が比較的低く、作業員が現場に立ち入れたため、遠隔操作の必要はなかった。東電の担当者は「4号機は直接見て操作できる『通常の作業』の範囲内だった。遠隔作業の難しさは次元が違う」と話す。
3号機のクレーンなどの装置は、不具合を繰り返してきた。東電が事故直後に立てた計画では、21年度内に事故を起こした4基で取り出しを終えるはずだった。再びトラブルが起きれば大幅に遅れかねない。小野明・福島第一廃炉推進カンパニー代表は「トラブルがゼロで作業が進むとは思っていない」と認める。
3号機での取り出しの成否は、23年度に始める1、2号機での作業の試金石にもなる。政府と東電は「3号機の実績をもとに1、2号機での具体的な計画を検討する」としている。
1号機の最上階は、崩れた天井などのがれきやクレーンが複雑に積み重なり、撤去が難航。原子炉格納容器の上ぶたがずれていることも判明した。建屋内は3号機より放射線量が高いとみられ、今回と同様の装置を設けて取り出せるかは不透明だ。放射性物質が漏れ出るおそれもあり、ふたを元の状態に戻す必要がある。
2号機も高い線量が作業を阻む。建屋は大きくは壊れなかったが、大量の放射性物質が中にこもった。
最上階の線量は、作業員が1時間とどまれば年間の被曝(ひばく)限度を超えるレベルという。遠隔操作で除染をした後、本格的な燃料搬出に備えて装置を設置するため、建屋上部を解体することになる。放射性物質の飛散防止をどうするかといった難題も解決できていない。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は、3号機と別の方法をとる場合、「どのぐらいの期間になるか読めなくなる」と指摘。23年度の開始時期について「計画に変更を迫るような困難が出てこないとは言えないというのが正直なところ」との見方を示す。
【朝日新聞】