東京電力福島第一原子力発電所の事故で、愛媛県に避難した住民20人余りが国と東京電力を訴えた裁判で、松山地方裁判所は、国の機関が行った地震活動の長期評価に基づき津波を予測し対策を行うことは十分可能だったとして、国と東京電力に対して合わせて2700万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。
福島第一原発の事故で福島県から愛媛県に避難した10世帯25人は、生活の基盤を失い、精神的な苦痛を受けたなどとして国と東京電力に1人当たり550万円、合わせておよそ1億4000万円の賠償を求めていました。
26日の判決で、松山地方裁判所の久保井恵子裁判長は、平成14年に国の機関が地震活動の長期評価を公表した時点で、当時の国の原子力安全・保安院が東京電力に津波の評価を試算させていれば10メートルを超える高さの津波が到達することを予測でき、浸水対策を行うことは十分可能だったと指摘しました。
そのうえで国と東京電力に対して、原告のうち、避難したあとに生まれた2人を除く23人に合わせて2700万円余りを賠償するよう命じました。
福島の原発事故で避難した人などが国と東京電力を訴えた集団訴訟の判決は8件目で、1審では千葉地裁での2件の判決を除き、いずれも国の責任が認められています。
原告「賠償十分でない」
判決で認められた賠償の額は、すでに東京電力から支払われた分が差し引かれ、当時住んでいた区域に応じて、1人当たり13万円から550万円と、ほとんどの原告にとっては求めている額より少なくなりました。
原告団の代表で福島県南相馬市から避難している渡部寛志さんは、「国の責任が認められたことは非常に良かったが、賠償額は十分とはいえず、私自身は、この賠償額では、生活再建を図れない」と話していました。
原子力規制委「国の主張認められず」
判決について、国の原子力規制委員会は、「国の主張について、裁判所の十分な理解が得られなかったと考えている」としたうえで、「原発事故を踏まえて作られた新たな規制基準の審査を厳格に進めることで適正な規制を行っていきたい」とするコメントを出しました。
東京電力「内容精査し対応検討」
判決について東京電力は、「原発事故で福島県民の皆様をはじめ、広く社会の皆様に大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて改めて心からおわび申し上げます。松山地裁の判決については、今後、内容を精査し、対応を検討して参ります」とするコメントを出しました。【NHK】